建築研究開発コンソーシアム20周年記念誌
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30 CBRD 20th Anniversary時間労働の是正」「給与・社会保険」「生産性向上」の3つの分野に対して新たな施策を設け、業界全体での取り組みを促している。その背景にある理由としては、大きく以下の4つがある。・長時間労働の常態化 建設業界の実労働時間は、製造業と比べると年間105時間、全産業平均とでは336時間も長い。・給与水準の低さ 年間賃金総支給額は近年上昇傾向にあるものの、他業種に比べると、その水準は決して高いとはいえない。たとえば製造業の男性労働者と比べると年間総支給額は約5%も低いことから、人手不足を増長する原因にもなっている。・社会保険加入率の低さ 雇用保険、健康保険、厚生年金の加入割合は数年前に比べると上昇しているが、2017年においても企業別では 国土交通省は2022年4月、国土交通行政における技術開発等を含む技術政策の基本的な指針として、2026年度までを計画期間とする「第5期国土交通省技術基本計画」を策定した。今後5年間で戦略的・重点的に取り組むべき具体的な技術政策をとりまとめ、国民が「真の豊かさ」を実感できる社会の構築を目指すものである。 技術研究開発は16分野に関して進められ、推進する仕組みの構築については、重点的に取り組むべき次の6項目が上げられている。1.防災・減災が主流となる社会の実現2.持続可能なインフラメンテナンス3.持続可能で暮らしやすい地域社会の実現4.経済の好循環を支える基盤整備5.デジタル・トランスフォーメーション6. 脱炭素化・インフラ空間の多面的な利活用による生活の質の向上 このような技術開発が実現する将来社会のイメージが図2.1-5および図2.1-6である。 2021年の総務省統計局「科学技術研究調査の結果」によると、研究を実施している企業の2020年度の売上高に対する研究費の比率は3.36%である。産業大分類別にみる97%、労働者別では85%に留まっている。・働き手不足の深刻化 総務省によると、2015年時点の建設業就業者数は55歳以上が33.8%を占める一方、30歳未満は10.8%に留まっている。このまま高齢化が進んでいくと、働き手が一気に不足する可能性があると指摘されている。 近年は少子高齢化の影響による労働力不足が深刻化しており、建設業は事業の存続のために労働環境を見直すことが急務になっている。他業種と比較してさらに人が集まりにくくなる可能性や、将来的に人手不足が一層加速することも懸念されている。これらの問題を回避するためにも、DXの推進による生産性の向上は勿論のこと産業構造や事業環境を労働者にとってより魅力あるものに変えていく努力が必要となろう。と、「学術研究、専門・技術サービス業」が6.39%と最も高く、次いで「製造業」が4.41%、「農林水産業」が2.31%などとなっている。これらに対して建設業は0.57%に留まっているものの、大手企業の中には年間100億円以上の研究費を投じる企業もあるなど、金額としては決して少なくはない。 図2.1-7に示した、一般社団法人日本建設業連合会が2021年3月に発表した「建設業における研究開発に関するアンケート調査結果報告書」(有効回答数49社)によると、研究開発実施の有無は、「社内で研究開発を実施している」が78%(38社)、「社内で研究開発を実施していないが、社外に外注・委託している」が4%(2社)となり、82%が研究開発を行っているとの結果である。また、図2.1-8に示すように、各社の研究開発費の対前年比は、直近5年(2017年度~2021年度)単純平均で+15.8%と継続的に増加している。さらに、図2.1-9に示すように、研究開発テーマを短期テーマ(2年以内)と中長期テーマに分けて研究開発費の推移を見ると、2017年度の短期テーマ:60%、中長期テーマ:40%から、2021年度の短期テーマ:54%、中長期テーマ:46%へと、中長期テーマにその比重が移っていることが判る。(3)研究開発環境

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