建築研究開発コンソーシアム20周年記念誌
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22 CBRD 20th Anniversary 建築研究開発コンソーシアムが創設20周年を迎えられたこと、お祝い申し上げます。これまで長きにわたって産官学の異分野・異業種が集まる本コンソーシアムが様々な研究会をはじめとする諸活動を継続し、建築・住宅分野の研究開発に大きく貢献できたことは、建設業に携わる我々にとっても心嬉しい限りです。建設業における近年の社会背景・課題 ここ10年間の社会の変化は著しく、来たる南海トラフ巨大地震や首都直下地震など大規模災害への備えや少子・高齢化による労働力減少への対応、エネルギー問題に加えて、多岐にわたる新たな課題が顕在化してきました。すなわち、近年、毎年のように生じる豪雨災害、土砂災害など自然災害に対する課題や、環境汚染・地球温暖化防止対策としての脱炭素社会への課題、新型コロナウイルスの世界的流行による医療崩壊、経済活動の抑制、それに伴って促進されたテレワークを含む多様で柔軟な働き方を導入した“働き方改革”が喫緊の課題として挙げられます。こうした課題に対し、本コンソーシアムでは、研究企画ミーティングやアイデアコンペ、研究会などの様々な活動を通じて建設業および建設関連産業全体で連携して取り組むべき、技術革新による解決策を模索してきました。 2022年2月にはロシアのウクライナ軍事侵攻が始まって終結が見通せない状況が続いており、我が国の経済やエネルギーに様々な影響が生じています。建設業界(建築・住宅分野)も例外ではなく、一部の建設材料の調達や円安の影響を含む価格の高騰など、社会情勢や外部環境の変化に伴う影響を多大に受けています。産官学連携活動のプラットフォームの役割を有する本コンソーシアムには、こうした広範囲の社会課題の解決への取り組みの場としても活用されるように益々積極的な活動の展開と情報発信が求められていると感じています。喫緊の課題への取組み 近年の激甚化する災害に対して本コンソーシアムでは、リモートセンシングに関する技術や地下シェルターに関するものなど先進的な取り組みがアイデアコンペや研究会を通じて提案・議論されてきており、我々建築に関わる者の責務である安全安心なまちづくりに関する様々な活動を続けています。 2050年カーボンニュートラルの実現を目指した脱炭素社会へ向けた社会的要請への対応では、建設関連のそれぞれの企業活動における直接的なCO2排出量(Scope1~2)に留まらず、引き渡し後の建築物の運用に付随する間接的なCO2排出量(Scope3)に貢献する技術開発活動の推進と事業モデルの舵取りが必要でしょう。本コンソーシアムでは、カーボンニュートラルに向けた建築物の基準や制度に関するアイデアの提案や、国策である木造建築物の普及促進に関する研究会などがあり、それぞれ議論が進められています。さらに本コンソーシアム以外の動向に目を向けますと、例えば製造過程で大量のCO2を排出しているコンクリート材料の低炭素化を図るため様々な技術が開発され適用され始めていますが、単独の企業で研究開発を行って適用を推進する株式会社竹中工務店 取締役副会長中嶋 啓吾多様化する社会課題に対応する研究開発プラットフォーム

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