建築研究開発コンソーシアム20周年記念誌
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20 CBRD 20th Anniversary 建築研究開発コンソーシアムが創立20周年を迎えられましたこと、心からお祝い申し上げます。2020~2021年度の二年間にわたって副会長を務めさせていただいた経験をもとに、建築研究開発コンソーシアムの役割や成果について述べさせていただきます。 新型コロナウイルスの感染が国内で初めて確認されてから3年余りが経ちました。当初は緊急事態宣言などの厳しい行動制限により、建築研究開発コンソーシアムでも講演会や見学会が中止になりましたが、現在は、ワクチン接種の効果により重症化リスクは低下し、感染対策と社会経済活動の正常化の両立を目指す方向に進んでいます。一方、昨年2月にロシアがウクライナに軍事侵攻して戦争状態が続いており、国際情勢は極めて不安定化し、エネルギーや食料などの供給不足による急激な物価上昇が生じています。直近の3年間でも、パンデミックや戦争による物価高など、予測困難で急激な変化への対応が建築分野にも求められています。 気候変動や自然災害の対策も、建築分野が総力上げて取り組むべき重要な課題です。2020年10月の政府のカーボンニュートラル宣言を受けて、カーボンニュートラル化へ向けた社会の動きが加速しています。自然災害については、毎年のように生じるようになり激甚化している風水害のほか、地震災害への備えも重要です。南海トラフ地震は今後30年以内に発生する確率が70%~80%とされており、災害が発生しても早期に日常に回復できるような持続可能な社会の構築が求められます。 日本社会は人口の急速な減少という未体験の時代に突入しており、建設業では、少子高齢化に伴う技能労働者の減少と2024年の「働き方改革関連法」に向けた生産性向上が喫緊の課題になっています。建設ロボットの導入や、BIMによる設計・施工の合理化の他、AI・IoTを建築の各段階で利用し、より少ない人数で建設する技術の普及が期待されています。 上記のような多くの社会課題の解決に向けて、一つの専門分野が解決できる課題と期間は限られていますが、多様な分野、立場の専門家の交流の場が提供されれば、共創活動が活性化され、課題解決に向けた展開が促進されます。建築関連分野における産業界、官界、学会など、異業種交流を目的に設立された建築研究開発コンソーシアムが大いに活躍できるのではないかと考えます。勉強会や研究会から研究成果の社会実装の段階まで、速やかな対応を期待します。 建築研究開発コンソーシアムは、若手研究者の継続的な人材育成も担っております。コロナ禍でテレワークが進み、WLB(ワークライフバランス)や働き方改革が進んだ時代では、人の移動や出会いの機会が減っています。一見、無関係な存在をつなぎ、新しい付加価値を創造するのは、人間の知的活動の根源です。若手技術者交流会などは、若手技術者の人的ネットワークの形成に有効と考え、当社も積極的に参加させています。専門分野に閉じこもらず、異分野との交流により興味の対象を広げ、新しい気づきが新しい未来の可能性を生む機会になると考えています。 建築研究開発コンソーシアムの役割は、異業種が交流して技術の開発を推進するためのプラットフォームとして、研究開発を担う人材育成の推進組織として、今後益々大きく発展するものと確信しております。20周年を一つの節目として、研究会やコンソ・プラザ、人材育成プログラムや若手技術者交流会などを通じて、建築分野の様々な期待に今後さらに応えていくことを祈念して、お祝いの言葉とさせて頂きます。大成建設株式会社 取締役矢口 則彦社会課題の解決に向けた異業種交流と人材育成

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