建築研究開発コンソーシアム20周年記念誌
21/132

CBRD 20th Anniversary 15 このたび、建築研究開発コンソーシアムが創立20周年を迎えられたことに、心よりお慶びを申し上げます。また、記念事業の一環として記念誌が発行されますことをお祝い申し上げますとともに、記念事業を企画された関係者の皆様に対して深く敬意を表します。 建築研究開発コンソーシアムは2002年に創立されて以来、研究テーマの企画、研究者の育成、異分野・異業種との連携などに尽力され、研究機関・企業等の研究開発の共通基盤の構築に大きく貢献してこられました。 また、設立から10年後の2013年には、活動の蓄積を踏まえた中期ビジョンを策定され、コンソーシアムの基本理念及びミッションと10年後を見据えた活動方針等を共有しつつ、精力的に活動を展開されてきました。 この20年を振り返ってみますと、建築・住宅分野における研究領域も大きく変貌しています。例えば、昨今の建築・住宅分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の進展により、BIMの活用やVR技術を利用した遠隔臨場検査など情報科学分野の応用研究が活発に行われるようになりました。 当財団におきましてもDXの推進に取り組むべきと考えておりますが、DXを進めようとすると、デジタル技術を利用することに捉われ、「DXの推進」自体が目的となってしまい、「解決すべき課題は何か」という観点が、希薄になってしまいます。まず、課題をきちんと分析・整理し、解決すべき課題、目指すべき姿を見据えることから始めなければならないと思っています。課題解決のために、情報科学分野の技術を利用することが出来るのであれば、結果としてDXが達せられるというのが理想的な姿のように思います。 近年の社会、建築・住宅産業界を見渡しますと、いくつかの大きな課題が存在します。人口減少による労働力不足、建設需要の減少、地球温暖化対策のための二酸化炭素排出量の削減、省エネルギー化などです。 これらの課題の全てを、建築・住宅分野の技術のみで解決することは困難かもしれませんが、課題を分析・整理し、様々な観点から検討することにより、解決への糸口が見つかるものだと思います。 「建築」は、もともと、工学、環境学、生物学、歴史学、民俗学などの複合分野と言われていますが、課題解決のためには、これまで建築・住宅産業界が培ってきた知識・技術の更なる深い理解や、より幅広い分野の新たな知識・技術との融合が必要とされるでしょう。 科学技術に限らず、あらゆる知識を導入して課題に立ち向かう必要があるかもしれません。歴史から学ぶこと、先人たちの知恵を借りることが必要でしょう。動物や植物の習性から得られるものはないでしょうか。数学的な合理性を追求したデザインが課題解決に役立つかもしれません。これから、益々必要とされるのは、これら幅広い分野を統合する力です。 コンソーシアムでは、これまで、研究開発プラットフォームの機能として、交流推進機能、インキュベーション機能、研究開発推進機能及び成果普及機能に係る活動を積極的に行ってこられました。今後、これら機能をさらに強化、発展させ、社会課題の解決に向けた研究開発プラットフォームの構築を期待いたします。 また、複雑な社会環境の中で委縮せず、冷静な観察眼を持ち、幅広い分野の知識を統合する能力を持つ研究者の育成にも期待いたします。一般財団法人日本建築センター 理事長橋本 公博建築研究開発コンソーシアムの分野統合力に期待して

元のページ  ../index.html#21

このブックを見る