建築研究開発コンソーシアム20周年記念誌
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CBRD 20th Anniversary 117スマートシティというように政策用語が変わってきている。これはデジタル化して消費電力が伸びて二酸化炭素の放出量が急に増えてしまうと、「サステイナブルではない」ということである。 また、パリ、バルセロナなど、世界では多くの都市がウォーカブルシティの導入を進め始めている。バルセロナのスーパーブロックモデルは歩行者天国化を進め、その結果コミュニティが復活して空気の質もよくなって、歩行者中心の街づくりが市民権を得ている。 イノベーションの面では街中にスタートアップやイノベーションハブのようなものを集積させるという動きが増えてきている。例えば、ヘルシンキの「マリア01」という施設は産官学民でスタートアップのハブになっており、現在1,000人以上が入居し、100以上のスタートアップ企業が入っている。このように、どうやってイノベーションをスタートアップと絡めてやっていくかということも街づくりの大きなテーマになってきている。これはつまり、暮らしやすいところにイノベーターが集まるからで、そこで産業を育成し、国際競争力を産むハブにしていこうという動きとなっている。 日本のスマートシティ構築のシステム構成では、データの取入れ口であるアセットから様々なハードにセンサーを付けてデータを拾い、それをデータ連携基盤に載せて分野ごとにデジタルソリューションをつくっていくのが基本モデルになっている。北海道更別村では、高齢者が100歳まで生きがいを持って楽しく過ごせるためにソーシャルベンチャーを設立し、各種サービスを提供している。会津若松市では「食・農業」「観光」「決済」「ヘルスケア」「防災」「行政」等の各分野にわたるデータ連携と付加価値の創出に繋がるデジタルサービスを実装している。また、前橋市では公共と民間が株式会社をつくって独自のIDが発行され、デジタル基盤が整うことで、高齢者や観光客、ビジネスマンなどユーザーごとの個別最適サービスが迅速に低コストで提供している。 一方、スマートシティが実装されたとしても、本当にウェルビーイングな地域社会が実現するのかという点が課題になることから、我々は客観的・主観的幸福感を見るためのウェルビーイング指標が必要と考えた。なぜなら、市民の生活実感とデジタルソリューションには大きな乖離があるからで、これを繋ぐためには、ウェルビーイング実現の効果を可視化しなければならないと考えられる。現在、我々のWebサイト(https://www.sci-japan.or.jp/)では、指標を無料でダウンロードできるので、ぜひ活用していただきたい。 指標づくりにあたり注意したのは、まずスマートシティは手段であるというところに軸足を持たなければならないことである。目的は市民の暮らしやすさと幸福感が高まること。幸福とは、今回の調査から「心の因子」「行動の因子」「環境の因子」という3つのカテゴリーの因子からドライブされることが分かってきた。例えば、心の因子群であれば「自分らしさ」「まちの人間関係」「まちの景観と都市機能(行政もふくめて)」これらの組み合わせがまちごとに異なり、同じように行動、環境の因子にも特徴的な因子群の相関関係が見られ、それらをタイプ分けし、「子育てのまち」「学生のまち」「働く人のまち」「成熟したまち」「その他のタイプ」「東京都23区」の6つにグルーピングした。これを参考に、まちのタイプ別の

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