建築研究開発コンソーシアム20周年記念誌
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コラム株式会社熊谷組千村  大108 CBRD 20th Anniversary「研究会に参加して」テラヘルツ波計測技術の建設分野応用に関する研究会に参加して-新たな技術への取り組みと発展に向けて- テラヘルツ波とは光と電波と特性を適度に持ち合わせた電磁波で、これまでは基礎的研究が中心でしたが、近年は応用に向けた取り組みもなされるようになってきた比較的に新しい技術になります。建築分野で利用される多種の材料を透過するため、新たな非破壊検査技術として活用が期待できます。 私は作業効率向上やより高度な点検が可能となる非破壊検査技術の研究開発に関心を持っており、テラヘルツ波に新たな技術創出の可能性を感じていました。一方でテラヘルツ研究分野でも建築応用を模索している研究者がいらっしゃったこともあり、ご縁があって主査として研究会を立ち上げることとなりました。ハウスメーカーやゼネコンなど広く建築に関わる企業から参加者が集まったのですが、私を含めてほとんどのメンバーが初学者でありました。「研究会参加者の募集でテラヘルツ波を知った」といった方も多く、建築分野でまだまだ知られていない技術であることを実感しながらも研究会はスタートしました。 まずは技術習熟ということで専門家による勉強会、講演会を開催してテラヘルツ波について学ぶことから始まりました。初めて触れる技術、分野で戸惑う部分もありましたが、これはテラヘルツ波研究者にとっても同じで、建築分野とテラヘルツ波分野のそれぞれの知識や経験をすり合わせていくように技術習熟は進められました。お互いの分野が結びつくようじっくりとディスカッションできたことは様々な活用のアイディアが生まれる貴重な機会になったと感じます。 とても多くの活用法の提案があり、それらを検証する実験を2回に分けて実施しました。結果的に様々な計測対象を想定した実験でテラヘルツ波が得意とすることや苦手なことを検証することができました。これらの結果をメンバーで共有できたことは大変貴重な成果であります。また、様々な材料を扱う中でテラヘルツ波研究者にとっても意外な結果が得られたことも特筆したい成果のひとつです。 本研究会は2021年に終了したのですが、テラヘルツ波の課題に対する新たな方向性の提案などもあり、これまでの活動を発展させるように新たな研究会を2022年より開始する運びとなりました。各分野からのメンバーも増えたこともあり、より活動の幅を広げて、新技術の創出や製品化を目指した産学連携の取り組みを進めたいと考えています。

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